2-7 言い逃れできない(第2部完)
数時間ぶりに光の差した空を見上げて、張り詰めていた気持ちが解放されたように全身から力が抜け、その場に膝をついた。 吹きざらしの屋上で、冷たい空気が髪を巻き上げる。あたりに漂う焼け焦げた匂い。なんだか急に五感が戻ってき […]
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この場が戦場になったとき、自分にできることなんて何もないんだろうと、そんなこと、始まる前から分かっていた。 そもそも求められていない。この組織での私の役割はSEを使ったサポートで、敵に捕まらないように自分の身を守るこ […]
『基地内部に未識別のトリオン反応――人型です! 人型近界民侵入!』 侵入警報に次ぐ沢村さんの緊急アナウンス。非戦闘員であるエンジニアさんのひとりが、ヒッと声を上擦らせ椅子から飛び退く。 「人型!? 一体どこから」 『間 […]
あれから警戒していた追撃は来なかった。 墜としきるつもりがないのに仕掛けてきた敵の思惑は不明だけれど、基地が大破するような事態は一旦回避したのではないかと、冬島さんが言っていた。 2人分の背に寄りかかり、椅子の座面 […]
『門発生 門発生 大規模な門の発生が確認されました 警戒区域付近の皆様は……』 *** 基地中に響きわたったブザー音に、ほとんど反射的に立ち上がった。 急いで内部回線に接続すれば、敵襲 […]
「そういやおめー、ケガの具合はどうなんだ。昨日ギブスが取れるとか言ってたか?」 隣を歩く、平均身長より高めの目線から、私の右肩あたりに焦点が合わせられる。 さっきまで銃をガンガン連射しながら振り回していた腕。換装して […]
無機質な目玉が、真っ直ぐこちらを見下ろしている。 人間を簡単に蹂躙する巨体。鋭い爪牙。低く震える咆哮。対峙する怪物は、私にとって恐怖の対象そのもので。けれど、今の私に、そいつを怖いと思う感情は微塵も浮かばない。 あ […]